デレク・ウォールバンク氏がChatGPTをマラソントレーナーに育成し、6ヶ月間のトレーニングで9kg超の減量に成功し、2026年パリマラソンで複数回の自己ベスト更新を達成。ただし、データの手動入力の負担やAIの記憶制限による課題も浮き彫りになった。
2026年4月12日に開催されたパリマラソンにエントリーしたデレク・ウォールバンク氏が、ChatGPTをマラソントレーナーに育成してトレーニングをサポートさせたという体験談を公開しています。
2025年4月にパリマラソンへのエントリーを決めたウォールバンク氏は、当時シンガポール在住で熱帯特有の暑さの中でほぼ毎日走っていました。香港でのハーフマラソンでは2時間47分の自己ベストを記録するなど好調でしたが、6月に仕事の都合でカリフォルニアへ引っ越すことになります。
仕事と家庭の両立が難しくなったため、トレーニング時間が激減し体重が増加してしまいました。そこでマラソン開催まで残り6ヶ月というタイミングで、ウォールバンク氏はChatGPTに「ランニングコーチ兼栄養士として、2026年4月12日のパリマラソン完走に向けて最高のコンディションに仕上げてください」と依頼します。
初期設定ではStravaのアクティビティログ、体重、食生活、ストレス要因、過去の負傷記録などを入力し、「レースを無傷で完走する」という目標を設定しました。この準備には約1時間を要したとのことです。
ChatGPTはウォールバンク氏の運動状況を分析し、「ペース配分の改善、上半身と体幹の筋力トレーニング強化、長距離走の実施、怪我の管理」をアドバイスしました。その後、以下のようなトレーニングスケジュールが作成されます。
月曜日はジム、火曜日はインターバルトレーニング、水曜日は休息、木曜日はゴルフなど別の運動、金曜日はジム、土曜日は5kmランニング、日曜日は5km以上の長距離走というプログラムです。
ウォールバンク氏はStravaですべてのトレーニングを記録し、心拍数やペースなどのデータをChatGPTに入力していきました。さらに、マラソン関連プロジェクト用とランニング・栄養・体重管理用の別々のチャットも作成しています。
しかし1日に何度もデータを手動入力する必要があり、特に食事記録が大変でした。「サラダを食べます。ほうれん草、鶏むね肉、ドライクランベリー、パルメザンチーズ、シーザーサラダドレッシング」といった詳細な入力や、分量を正確に記録するため手で大きさを測った写真を投稿することもありました。
ChatGPTは入力情報からカロリーを推定し、食事やトレーニング内容をアドバイスしてくれました。空腹感や筋肉痛の度合い、目標達成状況など、入力情報が増えるほどAIは適切に調整してくれたとウォールバンク氏は述べています。
しかし、数週間経過するとChatGPTの出力信頼性が低下し始めます。一度「月曜日はジムに行く時間がない」と伝えたことが、いつの間にか恒久的なルールになってしまうといった問題が発生しました。
原因はウォールバンク氏がChatGPTを人間のコーチのように一度入力した内容をすべて記録してくれるものと誤解していたことにありました。実際にはChatGPTのメモリには制限があります。
トレーニング開始3ヶ月頃からはハルシネーション(幻覚)も増え始めました。当初は訂正していたものの、「次第に苛立ちへと変わっていった」とウォールバンク氏は語っています。その他にも「計画したトレーニングの代わりに勝手にインターバルトレーニングを開始してしまう」や「目標体重に到達していないのに目標値をリセットして体調管理が上手くできていると褒める」といった問題が多数ありました。
これに伴い、初期段階のような減量は進まなくなったと述べています。それでもウォールバンク氏はChatGPTのおかげで「これまで以上に遠くまで、速く走れるようになった」と記しており、5kmや10kmランニングで複数回にわたって自己ベストを更新しました。
コーチの欠陥を改善するため、ウォールバンク氏はミシガン州立大学時代の友人でソフトウェアエンジニアのトム・ウルフ氏に相談しました。ChatGPTコーチについて説明したところ、ウルフ氏は「エージェントを作ればいいのでは」と提案したとのことです。AnthropicのClaudeのようなAIがエージェントに該当し、手動入力の代わりにリアルタイムでデータを自動的に取得・処理できます。
